観光まちづくりオーラルヒストリー研究

観光地域づくりの初期段階の作業として、資源保有者や管理者の取り組みや想いを、連携する関係者と共有していくことが重要だと考える。その方法として、ステイクホルダー個人への十分な聞き取り調査結果を一次データベースとして、個人の営みの積み重ねからなる地域の歴史をとりまとめ、さらに、観光戦略に資するように、資源の時空間整理や文脈整理を個人の語りに紐付いた形まとめる「観光まちづくりオーラルヒストリー」という調査・編集手法を提起し、試行している。
オーラルヒストリーとは文献から歴史を推察するのでなく、地域住民や関係者からの聞き取りによって得られた証言をデータソースとし、それらを整理、統合することによって歴史を紡ぎ出す方法である。本研究では、観光地域づくりの推進に資する編集方法や成果物の作成までを一連の手法としてパッケージ化することを意図した。

萩焼深川窯史の編纂:文化・芸術資源の価値や産地保全に配慮した観光活用にむけて

 
 

図1 萩焼深川窯史bookの公開範囲別の構成

2019年度は、温泉街振興と「萩焼」窯元振興の連携を目指す地域における窯元集落への調査を通して、この調査・編集手法が、文化・芸術資源の価値や産地の環境保全に十分配慮しながら観光活用を目指すことに対して、どのように活用できるかを研究した。調査企画・インタビュー調査と集落空間調査・編集の各フェーズで具体的成果イメージを提示しながら、5窯8名の作陶家の個々の懸念・ニーズを把握するプロセスを丁寧に踏んだ結果、最終的に、①個人保有資料、②集落内限定共有アーカイブとしての「萩焼深川窯史」、③温泉街との共有、情報発信テキストとしての「萩焼深川窯史<抜粋版>」を取りまとめた。これは、成果資料の情報公開範囲に段階を設け、それごとに掲載内容を調整することで、茶陶として名高い「萩焼」のブランド価値の低下や、窯元集落に観光客が押し寄せないように配慮しつつ、萩焼という一級の地域資源を観光活用することにむけた基礎情報と、相談体制、信頼関係を構築することにつながった。
建築学会オーガナイズドセッション梗概2020.pdf

完全版(左・窯元のみ共有)と抜粋版(温泉街で公開可)の2種類を作成した。

調査風景

旅館で閲覧できる萩焼深川窯史・抜粋版の内容(図1と合わせて参照ください)

高尾山観光まちづくりオーラルヒストリー:地域の資源や歴史を個人の語りと紐付ける

 
2017〜8年度は、行政や民間事業者が多様な事業を推進している本地区において、地元住民等の取り組みや想いを関係者で共有するため、観光まちづくりオーラルヒストリー調査を行った。登山観光地における観光と環境保全に尽力してきた観光事業者と地域住民を対象に実施した。インタビュー記事に加え、個人の語りに多様な地域資源を紐付ける主題図を作成している。観光の季節変動と資源との関係をみる「フェノロジーカレンダー(歳時記)」や「個人史からつむぐ高尾山年表」、「個人史に関連付けた地域資源マップ」などである。本調査結果は、「高尾山観光まちづくりオーラルヒストリー」として冊子化し、報告冊子は「高尾山口駅及び参道周辺整備計画」付録編として行政文書にも位置づけられた。高尾山口駅前の河川護岸改修と隣接公園の整備計画ワークショップで活用している。→整備経過はブログへ
高尾山観光まちづくりオーラルヒストリーBOOKは、こちらで閲覧ダウンロードできます

インタビューをもとに作成した個人史(中段部分)が入った地域の年表

インタビューをもとに地域資源への個人の関心についてのコメントが入ったフェノロジーカレンダー

インタビュー記事

研究一覧

長門湯本温泉観光まちづくりプロジェクト

高尾山地区 観光地マネジメント研究

林業基盤の職人連携による観光まちづくり

ヴェトナム・フエ皇帝陵の構成原理解読とエコツーリズム推進

里山再生✕コミュニティ形成をめざす開発住宅地のエリアマネジメント

テーマ研究一覧

地域観光プランニング〜観光まちづくりの計画技術の体系化

地域観光プランニングカレッジ:観光まちづくり人材教育プログラムの開発

観光まちづくりオーラルヒストリー研究

都市の祝祭空間研究

まちづくり技術を生かした地域ブランディング
 

川原研(大学院)で研究を希望する方へ

  • 受験前に必ず相談しに来てください。(ビデオ会議も可能です)。
  • 観光に関わる簡単な研究計画書をEメールで送付ください。
  • 大学院の合格前に、研究生として受け入れることはしていません(学科方針)。
  • 受験の詳細は観光科学域HPをご覧下さい。夏試験(8月)、冬試験(2月)があります。